2020年4月4日

阿久津隆さんの読書日記。そんなに読書家でもないのにfuzkueのやり方をかっこいいなあと思って、応援する気持ちでメールマガジンを取っているのだけど、あの読書日記をスマホで読むのはなんだかとても集中力が要って(ブログの時はバックナンバーを遡ってまで読んでいたのに不思議なことだ)、メルマガ自体はだんだんとたまにしか開かなくなり、でも応援はしたいので取り続ける、最近とうとう書籍が届いて嬉しい(メルマガを取っていると読書日記が書籍化された際に送っていただけるという特典がある)、持ち歩く、読む、という状態。だけど今号は

今週の日記は、下北沢開店前夜、押し寄せる不安と無気力、自宅フヅクエ。プルースト管啓次郎

ラジオは、下北沢店始まってこんな感じだよ〜みたいな話、というあんばいです。

というので、単純にミーハーな好奇心をそそられて久しぶりにメルマガを開いた。

 

書いていて思ったけど、スマホか紙の本かというよりも(それも多少はあるにせよ)、毎週読むべきものが届いて次のが届くまでにそれを読んで、というサイクルに乗っかれないだけなのかもしれない。そう言えば連続ドラマも今クールのアニメも追いかけられないたちだ。

 

店を休むということはただ収入が断たれるということではなくそこからさらに固定支出がばかすか出ていくことだ、というようなくだりがあり、それは最近毎日のように考えていることで、暗雲、の気持ちになった。あんうん。

 

退職の記念に職場からもらった(ねだった)ボダムのフレンチプレスコーヒーメーカーを初めて使う。1ℓ用の大きいサイズ。手順は本当に簡単ですばらしい。注ぐときに傾けすぎると粉っぽくなるという前情報、やってみて実感した。最後の一杯はどうしてもそうなりそう。やる気があればそこだけさらにフィルターでろ過すればきっとよろしい。フレンチプレスで作るミルクのコールドブリュー - ぶち猫おかわりもやってみたい。

 

あたたかい日で、ちょっと厚手のジャケットを着て行ってしまった身からすれば暑いくらいの日だった。

家から15メートルくらいのところに400メートルトラックを備えた広い公園がある。もう世のなか土日なんてあんまり関係ないのかな、と思っていたらぜんぜんそんなことはなくて、平日よりずっとたくさんのひとが名残りの桜を惜しんでいた。

新高円寺まで自転車で出た。マクドナルドが道に行列が溢れ出すほど混んでいて、咄嗟に「テイクアウトできる店」ということでなのだろうかと考えたけれど毎週末そんな感じなのかもしれなかった。1,2回しか使ったことのない店舗だ。レジから扉までの距離が極端に短いつくりのようにも見えた。

ボダムの味を覚えているうちに、ちゃんとしたコーヒー屋のコーヒーと比べてみようかといくつかの店を覗いてみたけれど、それより途中で見かけるタピオカの方が飲みたくなってしまってだめだった。ここでタピオカは違うだろ、とも思って結局何も飲まなかった。

メロンパン専門店(メロンパン専門店だったものなのかもしれない)が、立体的なメロンパン型の大きな看板をそのままに唐揚げ定食を販売していて、あからさまにメロンパンとプリントされた壁にコピー用紙の定食お品書きを貼って営業していて(なん?)としばらく脳がバグる。

 

長尾智子さんの直径22cmのケーキシリーズその2、キャラウェイチーズケーキ。材料が似たり寄ったりだったのでキャベツとキャラウェイとレモンのサラダもついで。レイチェル・クーさんによれば「スウェーデン文化には欠かせないもの」「レストランでは、クネッケブレッドやライ麦パンと同じくらいなくてはならないものとして最初に出されることが多い」とのこと。宅配ピザさえ付け合わせにキャベツサラダをつけるという。春キャベツでつくった。これは爽やかでとてもおいしい。

 

:昨日のキャロットラペ

にんじんは千切りにして軽く塩。しばらく置いてレーズンを混ぜ、酢(ワインビネガーがなかった)、マーマレードで和える。食べるときにローストしたくるみを散らす。

 

テイクアウトの分量が不確かだったので、もし足りなかったらと思い一品気休めをつくっておいたが、じゅうぶんだったから今日食べた。量が少ないかも、という心配を常にしてしまう食い意地。

 

レイチェル・クーのスウェーデンのキッチン

レイチェル・クーのスウェーデンのキッチン

 

 

 

2020年4月3日

長尾智子さんが提唱する「22cmの丸いケーキ」のレシピから、スパイスハニーケーキ。作るのは総菜の店だけど、できたら1日1種類くらいは甘いものも置けたらいいなと思っていて、練習。シナモン、ナツメグ、カルダモン、ジンジャーの平たいケーキ。しっとりとしてなかなかおいしく、家族にも好評。バターが足りなくて半分オリーブオイルに置き換えたのは問題なく感じられた。

 

退職前にばたついて荒れまくった部屋を片づける。店を始めたらそっちに入り浸りになるだろうからそれまでに完璧な自室を、この状態さえ保てばという部屋を作り上げたい。

そんなにプライベートの話をすることはなかった同僚からの手紙に「ひそかに同じ夢をもっている」とあって、ぜんぜん知らなかった。わたしも退職当日、帰るときになってわりとバチバチのオタクであることを人に告白したりしたけれど、毎日顔を突き合わせて仕事をする仲でなくなると言いやすい、言ってみたくなることというのは少なからずあるものだ。手紙をくれた彼女はセンスが良く多趣味で、ひときわ細やかに気を遣うひとだった。黄色い紙に青の線で鳥が描かれた一筆線。

 

:鶏肉とネギのピーナッツ炒め

鶏モモを一口大に切って皮目から焼く。軽く塩胡椒。1cmの小口に切ったネギを入れてさらに炒め、ローストしたピーナッツを合わせたら顆粒のガラスープで味。仕上げになんとなくのごま油。

 

すっかり湿気ってしまったピーナッツの消費おかずだったのに、肝心のピーナッツをローストしすぎて焦がした。

 

前から気になっていたお店がコロナの流れを受けてテイクアウトを始めたというので、さっそく電話で予約してみる。父が退職祝いに何かおいしいものでもと言ってくれていたが、この状況でなかなか外食もねえ…と権利放棄しかけていたから渡りに船で嬉しい。

往路、どこの店もガラガラでやっぱり飲食店は深刻だなあと憂えながら行くと、目的の店は比較的盛況でバタバタ中。ファンがついている店は強い、というのと、SNSはだいじ、というのと、いずれにせよ波はある、というのと。

蒸し鶏と紫キャベツ・ローストナッツのコールスロー、季節の果物(イチゴかせとかで選べた)と水牛のモッツァレラのカプレーゼ、地鶏のバスク風煮込みバターライス添え、季節のソース(空豆グリーンピースで選べた)で食べるフェンネル風味のサルシッチャ。おいしい。

 

ティーとアペロ: お茶の時間とお酒の時間 140のレシピ
 

 

 

2020年4月2日

一昨日まで勤めていたのは、お金持ちの高齢者(の中でも特に介護が必要な健康状態のひとたち)が住む施設のレストランだった。

朝食のメニューにシナモンバタートーストだったり、クロックムッシュだったりがあるのだけど、食パンの耳はここのお客さんたちには硬すぎるというのであらかじめ全部切り落としておく。業務用の一番大きいボウルに山盛りのパンの耳。スタッフ向けにご自由にお持ちくださいとしてもそう頻繁ではなかなか減らなくて(たまには料理上手のパートさんが持ち帰り、チョコがけラスクみたいに加工したものをまた差し入れてくれることなどもあった)、ミキサーにかければフライ用のパン粉などにもできるのだろうけれどそれをする人件費の方が市販のパン粉より高くついてしまうという世知辛い話もあり、なんてもったいないと思いつつだいたいは捨ててしまっていた。

こんなのも最後だからと、一昨日久しぶりにビニール袋にいっぱいもらってきた耳で耳だけのパンプディングをつくる。ナガタユイさんのレシピ。パウンド型に耳、アパレイユ、耳、アパレイユ、耳、アパレイユとぎゅうぎゅうに詰め込んで昨夜から一晩しっかりしみ込ませておいた。

朝、オーブンでじっくり湯煎焼きにすると、耳だけとは思えないふわっふわ食感。焼き立ても悪くなかったけれど、レシピにある通りしっかり冷やしておやつに食べたのの方がよりおいしかった。

 

昼食にも食パン続き。これも職場で朝出していたメニューを思い出しながら。

 

ピザトーストもどき

5枚切り食パンにケチャップを薄く塗る。スライスした玉ねぎ、ピーマン、ベーコンを炒めて全体に散らばし、シュレッドチーズを乗っけてトースターへ。

 

トマトソースを簡単にケチャップで代用したのと、職場ではソフトサラミを使っていたのが違う。耳がついているところも。わたしにもなんだか頼りなげでふにゃふにゃの、ふちなしトーストの方が食べやすくなる日が来るだろうか。

 

朝昼とメニューが重たかったか、母がお腹を壊してしまったので夜はお粥を炊いて煮やっこを作る。出汁を取りすぎたのでついでに切り干し大根と油揚げも煮ておく。

 

あれこれ用事を済ませに駅までは歩いた。新しい店用の口座に少ない軍資金を振り込む。昨日ふと思い立って入会した月日会の会費も。日記、続くだろうか。

 

 

 

 

2020年4月1日

3年勤めた会社を昨日で辞めた。

自分の店を持つためだ。長年の夢、とまで言ってしまうにはいかにもぼーっと生きてきたので気恥ずかしさが付きまとうけれど、長年の夢とくらい言えなければうまくいきっこない気もする。ともあれ長年ぼーっと考え続けた結果、自分のようなものにはそれがベストだと信じられた道への分岐点だ。授かりものとしか言いようのない幸運に恵まれた結果でもある。

 

物件が決まって、退職を決めたのが昨年末。上司に申し出たのは今年に入って、1月の末。コロナはいつから騒がれだしたのだったか、もう思い出せない。少なくともその頃わたしの周りで深刻視しているひとは全然いなかった。たった2ヶ月でこれだ。元職場は飲食業という括りの中では珍しく、この状況でも収益が途絶えない代わりに緊急事態でもそうそう休業できないところ。感染即重症化みたいな人たちが暮らす場所だから、対策はかなり徹底していた、のだと思う。最初37.5度以上とされていた出勤自粛のボーダーラインがしばらくして37度に引き下げられ、最終日のわたしは36.9度。勤労意欲に著しく欠ける自分が珍しく、出勤できてよかったとほっとした。怠け者でも最後の挨拶くらいはしたい。すごくサプライズのできない(とても好きなところだ)同期が、退職記念のプレゼントや寄せ書きの存在もがっつり教えてくれていたし。

 

今年中にどれほどの飲食店が潰れるかと騒がれる中で、新しい店。6月にプレオープンの予定だったけど、できるのか?そもそも、工事とか、進むのか?笑っちゃうくらい先のことはわからないし、こんなに先行き不透明な自分よりもっとずっとシリアスに困っているひとたちがめまいを覚えるほどいる。

まさに今日オープンの下北沢BONUS TRACK周りのツイートを、勝手な共感を持って眺めている。正直な、正直だからこそどっちつかずな話が目につく。この状況にまともに向き合えばどっちつかずにしかなれない。

 

退職翌日だからと自分を甘やかしてかなり無為にすごした。寿木けいの『閨と厨』を読む。『わたしのごちそう365-レシピとよぶほどのものでもない-』はあまたある料理本の中でも指折りに好きな一冊だが。女、を強く感じさせる文章に、少したじろぎながらも読んでいる。 石井好子のエッセイに触れる時のような感覚もあって、あこがれと少しのよそよそしさを持って知らない世界を覗き見るみたいな。

 

マスク2枚。何をどうやったらそこまで斜め上にスベり続けられるんだろう。

 

:にんじんのピーナッツ炒め

マッチ棒に切ったにんじんを太白ごま油で炒める。途中荒く砕いたピーナッツを絡めて、最後にエノキを加える。ナンプラー、みりん、ほんのちょっとの砂糖などで味。パクチーを乗せる。

 

:干し海老のスープ

干し海老をゆっくり戻す。戻し汁ごとあたためて、シャンタンと鶏ガラ、醤油で味。他の具はわかめと豆腐。春雨があったらもっとよかった。上がりにちょっぴりごま油。

 

 

閨と厨

閨と厨

  • 作者:寿木 けい
  • 発売日: 2020/02/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

わたしのごちそう365-レシピとよぶほどのものでもない-
 

 

 

 

巴里の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)